矯正的挺出とは、虫歯の進行などで歯質が大きく失われ、歯のフチが歯肉より下に位置している歯に対して行う処置です。
外科的歯冠延長術は歯肉を下げて歯のフチを出す処置に対し、矯正的挺出は歯肉の中に埋まった歯根を持ち上げて処置を可能にする部分矯正治療法です。
・なぜフチを出すのか
治療をした歯は、最終的に詰め物や被せ物(修復物)を装着します。
最終修復物は、健康な残存歯質にしっかりと適合し、抱え込ませる必要があります。
修復物を残存歯質に抱え込ませるために、所定の高さの歯のフチが必要なのです。
・フチを出さないまま修復物を装着するとどうなるのか
・修復物を製作する段階で精密なものが作れない
残存歯質が歯肉より下に位置するので、精密に型取りすることができません。
そのため、精密な修復物を製作することができません。
・適合の良い修復物を装着することができない
適合が悪いので、歯肉が腫れたり、隙間から細菌感染を再度起こしてしまったりします。
・修復物が外れやすい
残存歯質に抱え込ませることができないので、外れやすいです。
噛み合わせた時にかかる力(突き上げる力や、横からの力)が、残存歯質ではなく修復物に直接伝わるため、中の修復材料ごと脱落してしまうことがあります。
・残存歯質が破折してしまう
噛み合わせた時の力に抵抗することができないので、修復物だけでなく、歯そのものが割れてしまうことがあります。
・矯正的挺出の治療期間
部分的な矯正治療になりますので、歯を持ち上げる(引っ張り出す)のに、2~3ヶ月ほどかかります。
その後、仮歯期間や最終修復物への移行期間は、1~2ヶ月ほどかかります。
矯正的挺出を行うと、歯肉も同時に引っ張られますので、必要に応じて歯肉形成・外科的歯冠延長術を併用することがあります。
・適応歯
全ての歯が矯正的挺出で保存可能という訳ではありません。
処置に耐えられる十分な残存歯質が必要です。
また矯正的挺出後、修復物を支えることができる歯根の長さも必要です。(10mm)