
「頭痛も歯のせい?」と迷ったときの整理
「歯を診てもらえば、頭痛の原因もわかりますか」。歯科の外来でよく受ける質問です。朝の顎のだるさは、寝ている間の食いしばりと関係することがあります。一方で、肩こりや頭痛には姿勢や疲れなど別の要因も重なります。歯だけが原因と決めつけず、順に確かめていくことが大切です。この記事では、症状がつながる仕組み、詰め物の違和感の伝え方、歯科と医科のどちらに相談するかの目安を整理します。
この記事の要点まとめ
- 朝の顎のだるさや食いしばりは、肩こり・頭痛と関係する場合がありますが、原因は一つとは限りません。
- 詰め物の当たり方や顎の状態を歯科で確認し、姿勢や睡眠、疲れなども振り返りましょう。
- 急な強い頭痛や神経症状は医科へ、顎のだるさや歯の違和感が続く場合は歯科へ相談しましょう。
食いしばりや噛み合わせは、肩こり・頭痛に関係する?

関係する場合はあります。ただし、肩こりや頭痛の原因が噛み合わせだと言い切ることはできません。顔や頭の痛みは多くの人にみられ、その背景はさまざまだと報告されています1。
朝の顎のだるさと頭の痛みは、どうつながり得る?
就寝中の歯ぎしりや食いしばりがある場合、咀嚼筋(物を噛むときに働く筋肉)への負担は人によって異なります。こめかみにある側頭筋もその一つです。ここがこわばると、顎のだるさと一緒に頭の側面が重く感じられる場合があります。
顎の筋肉は首や肩の筋肉とも連動して働くため、首こりや肩こりが重なることもあります。ただ、朝のだるさだけで「夜に食いしばっている」と確定はできません。
歯並びが気になれば、肩こりの原因も歯と考えてよい?
そう決めるのは早いと考えております。歯並びの乱れと肩こりが同時にあっても、片方がもう片方を起こしているとは限りません。
頭痛にも緊張型頭痛や片頭痛などの種類があり、首・肩の状態、睡眠、ストレスによって出方が変わります1。
ポイント
症状が重なっていることと、原因であることは別の話です。歯と体の両面から順に確かめます。
詰め物の違和感と姿勢、どちらを先に確かめる?
最近入れた詰め物で特定の歯だけ先に当たる感じがあれば、まず歯科に伝えてください。並行して仕事中の姿勢や疲れも見直すと、原因を一つに絞り込みすぎずに済みます。
新しい詰め物で片側だけ先に当たる感じは、どう伝える?
治療した時期、先に当たる歯の位置、噛んだときの痛みやしみ、反対側で噛む癖がついたかを伝えていただくと、確認する箇所を絞りやすくなります。詰め物の高さがわずかに合わない場合は、歯科で接触を確かめてから調整を検討します。
ただし、顎の不調への対処として噛み合わせの調整を一律に行うことには、十分な根拠がないと評価されています2。違和感だけを理由に、健康な歯の形を整える処置を急がないことが、残る歯を守ることにつながります。
パソコン作業中の姿勢や疲れも、頭痛に関係する?
関係することがあります。画面をのぞき込む前かがみの姿勢が続くと首や肩に負担がかかり、集中しているときほど日中の噛みしめも起こりがちです。睡眠不足や繁忙期の疲れも、頭痛の感じ方に影響します1。
朝起きたときと仕事を終えたときで、顎・肩・頭のどこがつらいかを数日メモしてみてください。どの時間帯に強いかで、相談の糸口が変わります。
歯科では何を調べ、マウスピースや矯正はどう考える?
歯科では、顎・歯・詰め物の状態を診てから対応を選びます。装置や処置は、診察の結果に合わせて検討するものです。
顎の動きや歯の当たり方は、診察でどう確認する?
主に次のような点を確認します。
- 口を開けるときの痛み・音・動きの左右差
- 顎やこめかみの筋肉を押したときの痛み
- 歯のすり減りやひび、詰め物の当たり方
- 症状が始まった時期と経過
口腔内スキャナー(歯並びを立体データで記録する機器)は、マウスピースや詰め物を検討する際など、必要に応じて使うものです。それだけで頭痛の原因がわかるわけではありません。当院に限らず、検査を行ったうえで方針を検討し、説明を受けてから進めることが大切です。
噛みしめによる頭痛が気になるとき、何から始める?
始めやすいのは、日中に上下の歯が触れていないか気づくことです。気づいたら力を抜く、を繰り返します。
就寝中の食いしばりが疑われる場合は、ナイトガード(就寝時に着けるマウスピース)を相談する方法もあります。ただ、研究で主に評価されているのは顎の筋肉の痛みで、頭痛や肩こりへの効果はこの研究だけでは判断できません3。着けて顎の痛みや噛み合わせの違和感が出たら、調整や見直しを行います。
顎関節症と歯並びが気になる場合、矯正を先に始める?
先に顎の症状を確かめ、歯並びの相談は分けて考えるのが一般的です。矯正や歯の形を整える処置は元に戻しにくいため、顎の状態を見極めてから時期を判断します。歯を失ったままの部分があれば、残る歯への負担も合わせて確認します。
歯科への相談と医科の受診は、何を目安に分ける?
急に起きた強い頭痛や神経の症状があれば、歯科より医科・救急への相談を優先してください。朝の顎のだるさや噛んだときの違和感が続くなら、歯科に伝える段階です。
ポイント
急な強い頭痛や神経症状は医科を優先し、顎のだるさや詰め物の違和感は歯科へ。迷うときは記録を持って相談しましょう。
急な強い頭痛や手足のしびれがあるときは?
次のような症状は、救急も含めて早めに医科へ相談してください。
- 突然始まった、経験のない激しい頭痛
- 手足の麻痺やしびれ、言葉の出にくさ、ものが二重に見える
- 発熱や首の硬さを伴う強い頭痛
急ではなくても頭痛が続く場合は、内科や頭痛を扱う医療機関で一度確認しておくとよいでしょう。
歯科に相談するとき、何を記録して伝える?
送迎や仕事で時間が限られていても、次の点を控えておけば短い診察で状況が伝わります。
- 朝と日中、どちらで症状が強いか
- 頭痛の頻度と痛む場所
- 詰め物を入れた時期と歯の位置
- 噛みしめへの気づき
同じ記録は、医科を受診するときにも役立ちます。
検査や通院の回数、費用はいつ確認できる?
診察で原因の見当がつき、対応の提案を受けた時点で確認できます。診察・検査・処置・再評価という流れは共通でも、回数は症状によって変わります。
ナイトガードは条件により保険適用となる場合があり、素材などによっては自費診療になります。費用は医療機関や素材、診察・調整の内容によって異なるため、歯科医師にご相談ください。当院の費用は診察のうえでご案内します。
作製の流れや装着までの期間、通院回数は、口の状態や調整の必要性によって異なります。装着後の調整や使い方も含め、歯科医師にご相談ください。すり減りや破損があれば作り直しを検討します。
ナイトガードで起こりうる主な副作用・リスクは次のとおりです。
- 顎の痛みやだるさ
- 外した直後に噛み合わせがずれたように感じる違和感
- 歯や歯ぐきの圧迫感・痛み
- 異物感による寝つきにくさや、唾液が増える感じ
- 長く使ううちに噛み合わせが変化すること
- 手入れが不十分な場合の汚れの付着や口臭
こうした症状が出たときは使用を控え、早めに歯科で調整を受けてください。しばらく続けても変化が乏しければ、原因と受診先を見直す時期です。記録を手に、受診先で次の進め方を相談しましょう。
よくある質問
Q. 歯の痛みが、片頭痛のような頭痛につながることはありますか?
A. むし歯や歯の根の炎症による痛みが、こめかみや頭の側面に広がって感じられることがあります。痛む場所と原因の場所が一致しないこともあるため、歯の痛みがあれば歯科で確認し、頭痛が続く場合は医科にも相談してください。
Q. 市販のマウスピースで食いしばり対策をしてもよいですか?
A. 市販品が合うかどうかは、歯並びや口の状態によって異なります。使い始める前に、歯科医師にご相談ください。
Q. 顎関節症でマウスピースを使うと、歯並びが変わることはありますか?
A. 使い方や装置の形によっては、噛み合わせの感覚が変わったと感じることがあります。装着中は定期的に歯科で当たり方を確認し、違和感があれば早めにお伝えください。
参考文献
1. Porporatti AL, Schroder ÂGD, Lebel A, et al. Prevalence of orofacial and head pain: an umbrella review of systematic reviews. Journal of oral & facial pain and headache. 2024. PMID: 39800567 / DOI: 10.22514/jofph.2024.022
2. Tsukiyama Y, Baba K, Clark GT. An evidence-based assessment of occlusal adjustment as a treatment for temporomandibular disorders. The Journal of prosthetic dentistry. 2001. PMID: 11458263 / DOI: 10.1067/mpr.2001.115399
3. Chisini LA, Pires ALC, Poletto-Neto V, et al. Occlusal splint or botulinum toxin-a for jaw muscle pain treatment in probable sleep bruxism: A randomized controlled trial. Journal of dentistry. 2024. PMID: 39510242 / DOI: 10.1016/j.jdent.2024.105439
国立東北大学歯学部 卒業(33回生)
国立東京医科歯科大学大学院
インプラント・口腔再生医学分野博士課程修了
日本口腔インプラント学会
日本歯内療法学会
国際口腔インプラント会議
日本メタルフリー歯科学会認定医
