
硬いものを噛んだときの「ツンとした痛み」、そのままにしていませんか
いつも痛むわけではないから、と様子を見ているうちに、食事のたびに響くようになった——そんな段階でご相談に来られる方は少なくありません。噛むときだけ痛む背景には、いくつかの原因が考えられます。放置期間が長引くほど、選べる治療の幅は狭まりやすくなります。 ここでは主な原因と、受診を検討する目安を整理していきます。
この記事の要点まとめ
- 噛むと痛い症状にはむし歯や歯周病、噛み合わせの不調など複数の原因が考えられます
- 痛みが一時的に消えても炎症が続いている場合があり、経過の確認が大切です
- 症状が続くときは自己判断で様子を見ず、早めの相談で選べる対応の幅が広がる可能性があります
噛むと痛い症状を放置するリスクと進行プロセス
噛んだときだけ痛む。これは歯やその周囲の組織に炎症や負荷がかかっているサインとして捉えられます。口腔の健康が全身の健康と深く関わることは公的機関でも整理されており1、自己判断のまま経過を見続けることには注意が必要です2。
痛みが一時的に消えるのは注意信号?神経の壊死と炎症の拡大
数日たって痛みが和らぐと「治った」と感じやすいもの。けれど、それが回復を意味するとは限りません。むし歯が深く進んで歯髄炎(歯の神経の炎症)を起こした場合、炎症が強まった末に神経が壊死すると、痛みの信号そのものが届きにくくなることがあります。
その後、細菌が根の内部から根の先へと広がれば、根尖性歯周炎と呼ばれる状態へ移行することも。噛んだときの圧力で鈍い痛みがぶり返したり、歯ぐきが腫れたりするケースもみられます。痛みが消えたタイミングは、経過を見る合図ではなく確認の合図と考えていただきたい段階です。
重症化による抜歯リスクと治療期間・費用の増大
炎症が根の周囲の骨にまで及ぶと、歯を支える土台が弱り、歯の保存が難しくなる可能性があります2。歯を残せる段階なら処置は比較的シンプルに進みやすい一方、抜歯に至れば、ブリッジ・入れ歯・インプラントなど、その後を補う治療が新たに必要になります。
通院回数も治療費もふくらみやすく、家計への影響は小さくありません。当院ではインプラントに1本30万円(税込)の治療プランもご用意していますが、そもそもご自身の歯を残せるに越したことはないでしょう。早い段階でのご相談が、結果として時間と費用の負担を抑えることにつながる場合があります。
噛むと痛い場合に考えられる主な3つの原因

同じ「噛むと痛い」でも、その背景は一つではありません。代表的な3つの方向性を知っておくと、ご自身の状況を整理しやすくなります2。
むし歯の悪化・歯髄炎・根尖性歯周炎
むし歯が象牙質を越えて神経に近づくと、噛む圧力が刺激となって痛みが出やすくなります。さらに進んで根の先に炎症や膿がたまると、歯が骨からわずかに押し上げられたような状態に。噛み合わせた瞬間、「ズンと響く」感覚が生じることがあります。
歯周病による歯ぐきや歯槽骨の炎症
歯を支える歯槽骨が炎症で失われていくと、歯がわずかに動揺し、咬合時の力を受け止めきれなくなることがあります。歯周病は自覚症状が乏しいまま進むことがあるため1、噛んだときの違和感が最初の気づきになる場合も。歯ぐきの腫れや出血をともなうときは、歯周組織側の要因も視野に入れたいところです。
噛み合わせの不調・被せ物の高さ・歯ぎしりや歯のヒビ(クラック)
むし歯が見当たらないのに痛む。そんなケースでは、詰め物・被せ物の高さがわずかに合っていない、あるいは歯ぎしりや食いしばりで特定の歯に力が集中している可能性が考えられます。長年の負荷でエナメル質から象牙質へ細いクラック(ひび)が入り、歯牙破折へ進むこともあります。噛んだ瞬間だけ鋭く痛み、離すと消えるという痛み方は、ひびや過度な力が関わる場合の特徴の一つとされています。 なお、上の奥歯の痛みでは副鼻腔炎など歯以外が関与する非歯原性歯痛の可能性もあり、鑑別が求められます。
受診の目安と受診までの応急処置・NG行動
忙しい毎日の中で、受診のタイミングを見極めたい。練馬区にお住まいの方からも、そんな声をよく伺います。目安を持っておくと判断しやすくなります1。
放置せずに早めの受診を検討すべき症状の目安
次のような状態は、早めのご相談をおすすめします。
- 痛みが1週間以上続く、または頻度が増えている
- 歯ぐきの腫れ、膿、口臭の変化をともなう
- 何もしなくてもズキズキする時間帯がある
- 歯が浮いた感じや、動揺を自覚する
- 市販の鎮痛薬を繰り返し使い続けている
鎮痛薬で症状を抑え続けることは原因への対処にはならず、胃腸への負担など別の心配も生じます。
受診するまでの応急処置と噛みやすい食事の工夫
痛む側で噛まず、反対側で食べるのが基本。おかゆ、豆腐、卵料理、具材を細かくしたスープ、ヨーグルトなど、噛む回数の少ないメニューにすると患部を刺激しにくくなります。極端に熱いもの・冷たいもの・甘いものは症状を強めることがあるため、しばらくは控えめに。鎮痛薬を使う場合は用法用量を守り、使用した時間を記録しておくと診察時の参考になります2。
患部を刺激する温め・直接触る行為などやってはいけない行動
長風呂・激しい運動・飲酒は血流が増し、痛みが強まる要因になることがあります。痛む部位を舌や指、爪楊枝で触る行為も、感染や炎症が悪化する一因となりかねません。腫れがあるときは温めるのではなく、頬の外側から冷たいタオルで軽く冷やす程度にとどめてください。
歯科医院で行われる精密検査と治療アプローチ
原因が複数重なっていることも珍しくありません。だからこそ、まずは状態を見極める工程が出発点になります2。
原因を明確にするための歯科用CTやマイクロスコープ検査
問診で痛み方や経過を伺ったうえで、視診・打診・咬合紙による噛み合わせの確認、歯周ポケットの測定などを行います。平面のレントゲンでは重なって見えにくい根の先の状態は、歯科用CTによる三次元的な把握が手がかりに。細いクラックや詰め物の適合は、マイクロスコープで拡大しながら確認していきます。
当院では、口腔内スキャナー(3Shape TRIOS MOVE)や歯科用CT、マイクロスコープといった設備を導入し、精密検査を行ったうえで治療方針をご提案しています。治療回数や期間、費用の見通しをご理解いただいてから進めることを大切にしています。
根管治療・噛み合わせ調整・マウスピース作製などの対応
神経の炎症が進んでいる場合は根管治療が選択肢となり、状態によっては神経を残す方向を検討することもあります。被せ物の高さが関係していれば、ごくわずかな調整で負荷の分散をはかります。歯ぎしりや食いしばりが関与するケースでは、就寝時のマウスピース(歯ぎしり用のものは条件を満たせば保険適用となる場合があります)で力を逃がす方法も。
どの処置であっても、その後のメンテナンスが経過を左右します。練馬区石神井台の当院では、歯科衛生士担当制による予防を目的としたケアを通じて、治療後の状態を一緒に見守る体制を整えています。
よくある質問
Q1. むし歯が見当たらないのに、噛むと痛むのはなぜでしょうか。
A. 歯ぐきや歯を支える骨の炎症、詰め物・被せ物の高さのわずかなずれ、歯ぎしりによる負荷、歯のひび(クラック)などが関わっている場合があります。上の奥歯では副鼻腔の状態が影響することもあり、原因の切り分けには検査が役立ちます。
Q2. むし歯が進行しているサインには、どのようなものがありますか。
A. 冷たいものがしみる段階から、何もしなくてもズキズキする、噛むと響く、歯ぐきが腫れる・膿が出るといった変化へ移っていく傾向があります。痛みが急に消えた場合も、神経の状態が変化している可能性があるため確認をおすすめします。
Q3. 噛むと痛い症状は自然に治まりますか。
A. 一時的に和らぐことはありますが、原因そのものが解消したとは限りません。炎症が内部で続いているケースもあるため、症状が繰り返す場合は歯科医院でのご相談をご検討ください。
Q4. 1週間以上痛みを我慢していた場合、どうなりますか。
A. 期間だけで一律に判断はできませんが、炎症が根の先や周囲の骨へ広がると、治療の工程が増えたり通院期間が長くなったりする傾向があります。早い段階ほど、選べる方法の幅は広がりやすくなります。
Q5. 痛みが強いとき、市販の鎮痛薬を飲み続けても問題ないでしょうか。
A. 応急的な使用は考えられますが、長期にわたる連用は胃腸への負担などの心配があります。用法用量を守り、症状が続く場合は服用に頼らず受診をご検討ください。
参考文献
1. 厚生労働省「健康づくりサポートネット(疾病・健康に関する情報)」 https://kennet.mhlw.go.jp/information/
2. 厚生労働省「健康づくりサポートネット(口腔・歯の健康)」 https://kennet.mhlw.go.jp/information/teeth
国立東北大学歯学部 卒業(33回生)
国立東京医科歯科大学大学院
インプラント・口腔再生医学分野博士課程修了
日本口腔インプラント学会
日本歯内療法学会
国際口腔インプラント会議
日本メタルフリー歯科学会認定医
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