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噛みにくい・飲み込みにくいは何科?年齢による症状の見分け方

噛みにくい・飲み込みにくいは何科?年齢による症状の見分け方

「年のせい」で片づける前に、症状の出方を整理してみませんか


お茶でむせる、せんべいが噛み切れない。こうした変化は加齢によるものか、別の原因があるのか、ご自身では判断しづらいものです。この記事では、噛む段階と飲み込む段階のどこでつまずいているかを見分ける視点と、歯科・耳鼻咽喉科・脳神経内科それぞれに相談する目安を整理します。


この記事の要点まとめ


  • 噛む・飲み込む違和感は、口や喉など原因のある段階によって受診先が分かれます。
  • 入れ歯の不適合は歯科、水分のむせや喉のつかえ感は耳鼻咽喉科が受診の目安です。
  • 急な変化や体重減少を伴う場合は、早めに医療機関へ相談することが推奨されます。

噛みにくい・飲み込みにくいが起こる仕組みー症状が示す3つの段階


食事は、口で噛み砕く・喉へ送る・食道を通る、という流れで進みます。どの段階でつまずいているかによって、相談先が変わります。


噛む段階(口腔期)の不具合ーむし歯・歯周病・義歯の不適合


奥歯のむし歯や歯周病で歯ぐきに炎症があると、力を入れて噛むこと自体が難しくなります。部分入れ歯は、支えとなる歯や顎の骨の形が年月とともに変化するため、作製時にぴったり合っていても徐々にずれが生じます。義歯の不適合は、数年単位で少しずつ進むため自覚しにくいのが特徴です。噛み合わせの高さが変わったり、顎関節に負担がかかって口が開けにくくなると、食塊を細かくまとめられず、その先の飲み込みにも影響が及びます。


喉へ送り込み飲み込む段階(咽頭期・食道期)のトラブル


喉の奥では、一瞬のうちに気管の入口が閉じ、食べ物が食道へ送られます。この切り替えのタイミングがわずかに遅れると、液体が気管側へ流れ込んでむせが起こります。喉のつかえ感が続く場合は、咽頭炎、逆流性食道炎、咽喉頭異常感症(いわゆるヒステリー球)などが関わることもあり、まれに腫瘍性の変化が隠れていることもあります。口の中に問題がなくても違和感が残るときは、この段階を疑う手がかりになります。


加齢による自然な機能低下と、注意が必要な嚥下障害の境目


年齢とともに舌や喉の筋力は少しずつ低下します。ただし、明らかな嚥下障害は、全身の虚弱(フレイル)や筋肉量の減少(サルコペニア)と関連することが複数の研究で報告されています12。舌の圧力が低下している高齢者ほど、フレイルやサルコペニアを併せ持つ傾向があるという解析もあります2。むせる頻度が数か月で増えている、食事量が減った、体重が落ちてきた——この3つが重なる場合は、加齢の範囲内と考えず一度相談してみてください。


症状別に見る受診先ー歯科・耳鼻咽喉科・脳神経内科の判断基準

症状別に見る受診先ー歯科・耳鼻咽喉科・脳神経内科の判断基準

どの科に行けばよいか迷ったときは、「困っている場面」で切り分けると整理しやすくなります。


義歯が合わない・硬い物が噛み切れないときは歯科へ


入れ歯が浮く、食べ物が入れ歯の下に入り込む、硬い物だけ噛み切れないといった訴えは、口の中の状態を確認することから始まります。歯科では、残っている歯の状態、歯ぐきの炎症、噛み合わせのバランス、義歯の適合を順に確認します。歯科用CTで顎の骨の状態を把握したり、口腔内スキャナーで現在の噛み合わせを記録したりする方法もあります。入れ歯の調整で対応できる範囲か、作り直しや別の治療を検討する段階かを見極めることが、最初の分岐点になります。


お茶や汁物でむせる・喉の違和感が続くときは耳鼻咽喉科へ


固形物よりも水分でむせる、飲み込んだ後も喉に何か残る感じがする、声がかすれる。こうした症状が中心なら、耳鼻咽喉科での確認が向いています。鼻から細い内視鏡を入れて喉の動きを直接観察する検査では、飲み込みの瞬間に食べ物がどこへ流れるかを確認できます。食道の通過に関わる症状が疑われる場合は、消化器内科での胃カメラ(内視鏡検査)により逆流性食道炎や食道の病変を調べることもあります。


手足のしびれ・ろれつが回らないなど神経症状を伴うときは脳神経内科へ


飲み込みにくさに加えて、片側の手足が動かしにくい、顔の片側が下がる、言葉が出にくい、ろれつが回らないといった症状があるときは、脳神経内科の領域です。これらが急に現れた場合は、様子を見ずに救急対応を含めた速やかな受診を検討してください。脳梗塞や脳出血の後遺症、パーキンソン病などの神経疾患では、嚥下に関わる筋肉の動きが影響を受けることがあり、リハビリテーション科と連携した摂食嚥下訓練が行われる場合もあります。


自分で確認する見分け方ー噛めないのか、喉につかえるのか


受診前にご自身の症状を整理しておくと、医師や歯科医師に状況が伝わりやすくなります。


噛めないために飲み込めない場合のサイン


次の項目に当てはまるほど、口の中の段階に原因がある可能性が高まります。


  • 食事に以前より時間がかかるようになった
  • 食後に頬の内側や入れ歯の下に食べ物が残る
  • 入れ歯を外すと(別の意味で)楽に感じることがある
  • 硬い物を避けて、柔らかい物ばかり選ぶようになった
  • 片側だけで噛む癖がついている

噛み砕けていない食べ物は喉でまとまりにくく、結果として飲み込みにくさとして自覚されることがあります。


喉につかえて飲み込めない場合のサイン


一方、こちらが中心なら咽頭・食道の段階が疑われます。


  • お茶や汁物など、さらさらした水分で特にむせる
  • 飲み込んだ後も喉に残る感じがある
  • 食後に声がかすれる、ガラガラ声になる
  • 薬の錠剤が引っかかる
  • 食事中に咳き込むことが増えた

すぐに受診したほうがよい危険なサイン


以下は様子を見ずに早めの受診が望まれる目安です。


  • 半年以内に意図しない体重減少がある
  • 発熱を繰り返す、痰が増えた
  • 水分もほとんど取れない
  • 固形物がつかえる感覚が日ごとに強くなる
  • 飲み込みにくさが突然始まった

症状が出始めた時期、むせる食べ物の種類、服用中の薬をメモして持参すると、診察の精度が上がります。


放置した場合のリスクと医科・歯科が連携する相談先

放置した場合のリスクと医科・歯科が連携する相談先

誤嚥性肺炎や低栄養につながる具体的なリスク


むせは、本来気管に入ってはいけないものを押し戻す防御反応です。この反応が弱まると、気づかないうちに少量の唾液や食べ物が気管へ入り込み、肺炎の要因になることがあります。また、噛みにくさから柔らかい物ばかりを選ぶと、たんぱく質や食物繊維が不足しやすくなります。嚥下機能の低下は全身の虚弱と関連することが報告されており1、食事量の減少が筋力低下を招き、さらに飲み込む力が落ちるという循環につながる可能性があります。


医科と歯科が連携する摂食嚥下に関する相談先という選択肢


噛む機能と飲み込む機能は連続しているため、一つの診療科だけでは判断が難しい場合があります。近年は、歯科と耳鼻咽喉科、脳神経内科、管理栄養士、言語聴覚士などが連携して評価を行う摂食嚥下の相談窓口を設ける医療機関も増えてきました。嚥下に対するリハビリテーションの有効性については、集中治療後の症例を対象とした系統的レビューでも検討が進んでいます3。単独の科で原因がはっきりしないときは、こうした連携体制のある施設を紹介してもらう方法もあります。


練馬区石神井台でかかりつけ歯科に相談するときのポイント


長年通っている歯科医院に嚥下の相談をしてよいか迷う方もいますが、噛み合わせや義歯は飲み込みの土台に関わるため、入口としては自然な選択です。かかりつけ歯科では、口腔内スキャナーや歯科用CTなどの設備を用いて十分な精密検査を行ったうえで治療方針を検討することが一般的であり、必要に応じて他科への紹介という流れもあります。


なお、自費診療となる治療を検討する場合の一般的な費用・期間・回数の目安は、おおよそ次のとおりです。自費の入れ歯(ノンクラスプデンチャーや金属床義歯など)は、治療期間が2〜3ヵ月、通院回数が5〜6回程度で、総額20万〜50万円程度(診査・型取り、試し入れ、完成、完成後の調整を含む)が目安とされます。インプラントは、治療期間が3〜6ヵ月、通院回数が5〜6回程度で、1本あたり総額30万〜50万円程度(検査・診断、埋入手術、上部構造=被せ物の各費用を含む)が目安で、骨が不足して骨造成を併用する場合は5万〜15万円程度が加わることがあります。これらは公開されている情報から一般に言える相場であり当院の費用ではありません。実際の費用・期間・回数はお口の状態により異なり、当院の費用は診察のうえでご案内します。


自費診療は公的医療保険が適用されず、外科処置を伴う場合は腫れや感染などのリスクがあり、術後の継続的なメンテナンスが前提となります。


よくある質問


Q. 喉から食道にかけての違和感は何科に行けばよいですか?


A. 喉の入口付近の違和感が中心なら耳鼻咽喉科、食べ物がつかえる位置が胸のあたりと感じる場合は消化器内科が目安になります。どちらか迷うときは、まず耳鼻咽喉科で喉の状態を確認し、必要に応じて紹介を受ける流れが一般的です。


Q. ヒステリー球(咽喉頭異常感症)はどのくらいで落ち着きますか?


A. 期間には個人差が大きく、一律の目安を示すことは難しいとされています。数日で軽くなる方もいれば、数か月続く方もいます。まずは器質的な原因がないかを検査で確認したうえで、生活習慣やストレスとの関わりを整理していく流れになります。


Q. 飲み込むことへの不安が強く、食事が怖く感じます。どうすればよいですか?


A. むせた経験から不安が強まる方は少なくありません。実際の嚥下機能を検査で客観的に確認し、安全に食べられる食形態や姿勢を知ることで、不安が整理されることがあります。食事は椅子に深く腰かけ、顎を軽く引いた姿勢が基本とされます。


Q. 喉の違和感は、のどちんこ(口蓋垂)が原因のこともありますか?


A. 口蓋垂が長い、炎症で腫れているといった要因が違和感につながることはあります。ただし自己判断は難しいため、耳鼻咽喉科での視診や内視鏡検査で確認することをおすすめします。


Q. 歯を抜いた後そのままにしていると、噛みにくさに影響しますか?


A. 抜歯後の部分を長期間そのままにすると、隣の歯が傾いたり、噛み合う相手の歯が伸び出す(対合歯の挺出)ことがあり、噛み合わせ全体のバランスに影響する場合があります。ブリッジなど次の治療の開始時期は状態により異なるため、歯科でご相談ください。


参考文献


1. Yang RY, Yang AY, Chen YC, et al. Association between Dysphagia and Frailty in Older Adults: A Systematic Review and Meta-Analysis. Nutrients. 2022. PMID: 35565784 / DOI: 10.3390/nu14091812

2. Sakai K, Nakayama E, Yoneoka D, et al. Association of Oral Function and Dysphagia with Frailty and Sarcopenia in Community-Dwelling Older Adults: A Systematic Review and Meta-Analysis. Cells. 2022. PMID: 35883642 / DOI: 10.3390/cells11142199

3. Chen L, Liu C, Yuan M, et al. Interventions for Postextubation Dysphagia in Critically Ill Patients: A Systematic Review and Meta-analysis. Dysphagia. 2024. PMID: 38558176 / DOI: 10.1007/s00455-024-10695-1


金田 一高

歯科医師


しんみ歯科 石神井台

院長

金田 一高

▶ 監修者プロフィール

経歴
東京都立青山高等学校 卒業
国立東北大学歯学部 卒業(33回生)
国立東京医科歯科大学大学院
インプラント・口腔再生医学分野博士課程修了
資格・所属学会
歯科医師臨床研修指導歯科医資格(厚生労働省認可資格)
日本口腔インプラント学会
日本歯内療法学会
国際口腔インプラント会議
日本メタルフリー歯科学会認定医