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歯の神経を取る仕組みと内部構造、痛みが引いても通院が続く理由

歯の神経を取る仕組みと内部構造、痛みが引いても通院が続く理由

歯の神経を取るとは、歯髄を除去し内部を封鎖して歯を補う処置


「歯の神経を取る」処置とは、歯の中にある歯髄(しずい)を取り除き、根の管をきれいにしてふさいだうえで、土台や被せ物で形を補う一連の治療です。痛みが引いたあとも中の消毒や修復の工程が残っているため、途中で受診をやめないことが歯の寿命を左右します。この記事では、歯の中のつくりと処置の進み方、痛みが落ち着いたあとも治療が続く理由をまとめます。


この記事の要点まとめ


  • 「神経を取る」とは歯髄を取り除く処置で、歯の状態によっては歯髄を残す方法を選べることもあります。
  • 処置のあとは根の管の中をきれいにして消毒し、ふさいだうえで、土台や被せ物で歯の形とかむ働きを補います。
  • 痛みが落ち着いても治療が続くことがあり、残りの工程や受診の回数、費用を歯科医師に確かめましょう。

歯の神経を取る前に知りたい内部構造:歯髄の位置と、まず残せるかを考える理由

歯の神経を取る前に知りたい内部構造:歯髄の位置と、まず残せるかを考える理由

エナメル質・象牙質・歯髄・根管の位置関係と、根の先で骨へつながる仕組み


歯は外側からエナメル質、象牙質、歯髄(しずい)という3つの層でできています。中心にある歯髄は神経線維と血管が集まった軟らかい組織で、歯の根の中にある「根管(こんかん)」という細いトンネルを通っています。


根管は根の先端にある小さな穴(根尖孔:こんせんこう)で顎の骨の中の血管や神経とつながっています。歯髄には歯に水分や栄養を届け、冷たい・痛いといった異常を知らせる役割があります。


「神経を取る」は細い神経を1本抜くことではなく、歯髄という組織を取り除くこと


「神経を取る」とは、細い糸のような神経を1本だけ引きぬくのではなく、歯髄というかたまり全体を取りのぞく処置のことです。むし歯が象牙質をこえて歯髄まで届いたとき(C3が目安)や、強い痛みが出る歯髄炎が起きたときに考えます。


処置には、生きている歯髄を取り除く「抜髄(ばつずい)」と、すでに細菌感染して壊死した組織を清掃する「感染根管治療」があります。どちらが必要になるかは、痛みの出方や根の先の状態などを診査して判断されます。


歯髄の位置を知ったうえで、まず神経を残せるか検討する


歯髄を取ると歯が弱くなることがあり、そのぶん歯を残しつづけるのが難しくなります。そのため、むし歯が深い場合でも、まずは神経を残せるかどうかを検討する考え方があります。


感染した部分だけを取り除き、MTAセメント(歯科用のセメント)でふたをして神経を残す「歯髄保存療法」も選べる方法のひとつで、歯を長もちさせることにつながると期待されています。当院では保険がきかない自費診療として、20,000~25,000円で行っています。また、処置のあとに一時的にしみたり痛んだりすることがあり、歯髄の炎症が深いときや歯に深いひびがあるとき 1 には神経を取る処置が必要になります。


ポイント

「神経を取る」とは中心部の歯髄を取り除く処置であり、歯の寿命を保つ観点からは、まず歯髄を残せるかを診査したうえで治療方針が検討されます。


神経を取った後の歯の中で行うこと:根管の清掃・封鎖から土台と被せ物まで


根の本数・方向や破折の有無を調べ、治療方法を考える


根管の数や曲がり方は前歯と奥歯で異なり、一人ひとりの歯によって複雑な形をしています。外からは見えない場所にあるため、口腔内の診察に加えてパノラマ写真やデンタル写真、必要に応じて歯科用CT(三次元の立体画像撮影装置)を用いた検査が行われます。


これらの画像と診察を合わせて、根の数や向き、神経の位置、歯の根が割れていないか 1 を調べ、症状に合った治し方を選びます。


歯髄を取り除いた後も、根管内の処置と唾液の侵入を防ぐ工程が続く


歯髄を取り除いた後の根管の壁には細菌が残りやすいため、内部を繰り返し洗浄・消毒し、最後に薬剤で隙間なく塞ぐ「根管充填(こんかんじゅうてん)」という工程が続きます 2。治療中に「ピーピー」と音が鳴る機械は、根の先端までの長さを電気的に測る装置であることが多いです。


自費診療の精密根管治療では、マイクロスコープ(歯科用顕微鏡)ですべての歯の根管内を拡大して確認します。さらに、ラバーダム(ゴムのシート)で唾液や細菌が入るのを防ぎながら、よくしなるニッケルチタンファイルという器具で曲がった根管内を処置する方法があります。また、封鎖材としてバイオセラミック系シーラーやMTAセメントなどが用いられることもあり、材料の性質や術後の痛み・経過について研究が重ねられています 2。


根管の封鎖で終わりではなく、残った歯に合わせて土台・被せ物を考える


神経を取った後の歯が空洞のままになるわけではありません。封鎖した根管の上に「土台(コア)」を立て、その上から被せ物(クラウン)を装着して、かむ機能と形を補います。


根管の処置が終わっても、被せ物と歯の間に隙間があるとそこから細菌が入り込み、再感染を起こす原因になります。そのため、残った歯の量に合わせて土台と被せ物の材質を選び、歯との適合を高めることが治療後の経過に関わります。


治療の段階処置する場所主な目的
根管の清掃・消毒根管の内部感染した組織や細菌を取り除く
根管充填(封鎖)根管の内部空洞を薬剤で塞ぎ、細菌の繁殖を防ぐ
土台・被せ物の装着歯冠部(歯の上部)歯を補強し、形とかむ機能を補う

なお、根の中の治療とは別に、土台や被せ物のお金がかかります。かかる金額は、歯の状態や選ぶ材料によって変わります。一般的には、診察のあとに費用の説明があります。


痛みが落ち着いても治療が続く理由:症状の改善と治療の完了を分けて考える


精密根管治療は1回60~90分・基本1~3回を目安に受診を相談する


神経を取り除くと歯髄の炎症による強い痛みは和らぎますが、その時点では根管の消毒や封鎖は終わっていません。受診回数は、根管の曲がり方や感染の広がり具合によって変わります。


1回の処置を15〜30分ほどで行う進め方のほか、自費診療の精密根管治療では1回あたり60〜90分ほどの時間をとり、受診の回数を症例により基本1〜3回に抑えて進める体制もあります。なお、この回数は根の中の処置の目安で、土台や被せ物が入るまでには別に受診が必要です。仕事の出社日やお子様のお迎えなどで行ける時間帯が限られるときは、前もって歯科医師に伝えて治療の予定を相談しておくと見通しを立てやすくなります。


仮蓋の期間に気をつけたいことと、根管治療や土台のまま放置した場合のリスク


治療と治療の間は、根管に薬を入れたうえで「仮蓋(かりぶた)」をして塞ぎます。仮蓋は取り外す前提の軟らかい材料のため、治療中の歯で硬い物や粘着性のある物をかまないようにし、もし外れてしまった場合は早めに歯科医院へ連絡してください。


痛みが消えたからといって、仮蓋や土台のまま長く放置するのは避けましょう。隙間から唾液の細菌が入り込んで根の先に膿が溜まる「根尖性歯周炎(こんせんせいししゅうえん)」を起こしたり、補強されていない歯が割れたりする原因になります。根の先の炎症は、痛みなどの症状がないまま長く続くことがよくあります 3。


口の中の腫れや違和感は、痛みが少なくても自分で判断して放っておかず、診察を受けることが大切です。治療中や治療後に強い痛みや歯ぐきの腫れが出たときは、次回の予約日を待たずに相談しましょう。


痛みが引いた後こそ、残っている工程と受診予定を確認する


根管治療は歯の内部の処置が続くため、鏡を見ても変化がわかりにくく、痛みも落ち着いていると受診への意欲を保ちにくい面があります。過去に仕事や家庭の事情で受診が途切れてしまった経験がある方も、ご自身を責める必要はありません。


歯の寿命を延ばすためには、歯科医師と患者様が一緒にゴールを見据えて治療を進めることが支えになります。歯科医院を探す際や、次の受診時には、以下の点を確認してみてください。


  • いま治療がどこまで進んでいて、あと何回通う必要があるか
  • 1回の処置にかかる時間はどのくらいか
  • 土台や被せ物が入るまで、全体でどのくらいの期間とお金がかかりそうか

以前に治療が途切れてしまった歯がある場合も、残っている歯の状態を調べたうえで対応を検討できますので、まずは歯科医師へお声がけください。


ポイント

痛みの消失は治療の完了ではありません。仮蓋や土台のまま放置せず、被せ物の装着まで受診を続けることが歯を守る結果につながります。


よくある質問


Q. 前歯や奥歯を叩くと響くように痛いのはなぜですか?


A. 歯の内部の炎症が根の先(根尖孔)を越えて、歯を支える骨や「歯根膜(歯と骨をつなぐ膜)」にまで広がっている可能性があります。むし歯の進行による感染のほか、歯に細かなひびが入っている場合 1 や噛み合わせの負担が関わることもあるため、早めにレントゲン検査などで原因を調べることが大切です。


Q. 根管治療の途中や、土台のまま2年ほど放置してしまった歯でも治療を再開できますか?


A. 残っている歯の質が十分にあり、歯の根に深い破折がなければ、再び根管内を清掃・消毒して治療を再開できる場合があります。ただし、長期間放置した歯は内部でむし歯が進行して軟らかくなっていたり、根が割れていたりすることもあるため、まずは現在の歯が保存できる状態かどうかを診査します。


Q. 神経を取った後の処置で痛みや腫れが出ることはありますか?


A. 根の中をきれいにしてふさいだあとなどに、かんだときの違和感や痛みが出ることがあります。ズキズキと眠れないほどの痛みや歯ぐきの大きな腫れがある場合は、予約日を待たずに受診している歯科医院へご連絡ください。


参考文献


1. Zhang S, Xu Y, Ma Y et al. The treatment outcomes of cracked teeth: A systematic review and meta-analysis. Journal of dentistry. 2024. PMID: 38272437 / DOI: 10.1016/j.jdent.2024.104843

2. Zamparini F, Lenzi J, Duncan HF et al. The efficacy of premixed bioceramic sealers versus standard sealers on root canal treatment outcome, extrusion rate and post-obturation pain: A systematic review and meta-analysis. International endodontic journal. 2024. PMID: 38606520 / DOI: 10.1111/iej.14069

3. Tibúrcio-Machado CS, Michelon C, Zanatta FB et al. The global prevalence of apical periodontitis: a systematic review and meta-analysis. International endodontic journal. 2021. PMID: 33378579 / DOI: 10.1111/iej.13467


金田 一高

歯科医師


しんみ歯科 石神井台

院長

金田 一高

▶ 監修者プロフィール

経歴
東京都立青山高等学校 卒業
国立東北大学歯学部 卒業(33回生)
国立東京医科歯科大学大学院
インプラント・口腔再生医学分野博士課程修了
資格・所属学会
歯科医師臨床研修指導歯科医資格(厚生労働省認可資格)
日本口腔インプラント学会
日本歯内療法学会
国際口腔インプラント会議
日本メタルフリー歯科学会認定医